2018年11月11日

< 優 >

僕は車で移動することが多いのですが、初めて行く場所にはグーグルマップのカーナビが役に立っています。グーグルマップのカーナビはとても便利で使いやすいのでカーナビを製造しているパイオニアが危機に瀕しているのも頷けるというものです。無料でカーナビを利用できるのですからわざわざ高いお金を払ってカーナビを買おうという人がいなくても当然です。

それほど便利なグーグルマップのカーナビですが、先日初めて困ったことに遭遇しました。それはグーグルマップのカーナビが作動しなかったのです。いくら経路を検索しても「ルートが見つかりません」と表示されるのです。僕は地理に疎いのでグーグルマップが使えない状況は非常事態でした。

そこでいろいろと考えた末に解決策を思いつきました。それはグーグルマップではないカーナビアプリを使うことです。そこでアプリを紹介するサイトで見たことがあるヤフーのカーナビアプリをダウンロードすることにしました。

結論を言いますと、これで難局を潜り抜けることができたのですが一つ問題が起きました。それはアプリをダウンロードするときにかなりの量のバッテリーを消費したことです。普段アプリをダウンロードするときはいつも自宅にいるときでしたのでバッテリーのことを意識したことはありませんでした。そのときに初めて、アプリをダウンロードするときは「バッテリーの残量を意識することが大切」と認識した次第です。ちなみに、ヤフーのカーナビアプリも使いやすかったです。

*****それでは、今週の本題。

ちょっと違和感と言いますか、あざとい感を感じますが、視聴者には好印象を与えるのかなぁ、というテレビCMがあります。大手クレジットカードのCMですが、「Priceless、お金で買えない価値がある」というキャッチコピーがアナウンスされるCMです。お金万能の今の時代に、そのアンチテーゼとして訴えているように感じます。似たような発想のCMに大手自動車メーカーの「モノより思い出」をキャッチコピーにしているCMもあります。こちらも「お金よりも体験」が大切と訴えています。

ちょっと余談ですが、クレジットカードのCMは最初に制作されたときはコピーが少し違っていたそうです。最初は「お金で買えないものがある」だったそうですが、このコピーですと「無料」というイメージが強すぎるために「もの」を「価値」に変えたそうです。ほんの少しの違いですが、異なったイメージを与えます。言葉は大きな力を持っています。

それはともかくこれらのCMは、一見しますと社会モラルの理想論を訴えています。世の中が金銭的な損得だけで判断され、決められ、動いていてはよい社会はできません。バブルが発生し、そしてバブルが崩壊しても結局は「お金が最も大切」という風潮になっている社会を揶揄しているとも言えるCMです。ですが、今一つ心に響いてこない感があります。その理由はおぼろげではありますが、制作者および企業の本心が透けて見えるからです。

この広告の発注元である企業も、そして制作した広告代理店も世界に名だたる大企業です。心に響いてこないのはそこにあります。大企業になるにはお金儲けを巧みに行って競争に勝利する必要があります。そうでなければ大企業になれるはずがありません。そのお金儲けを第一義にしている企業が「お金よりも大切なものがある」と訴えても信ぴょう性に疑義を感じても当然です。

このように口で言うことと実際の行動が違っていますと、多くの人はやはり反感を覚えます。今年からメジャーリーグに移籍した大谷翔平選手は米国でも人気がありますが、その理由は成績ももちろんありますが、移籍する際の判断材料が「移籍金の多寡」でなかったこともあります。お金よりも夢を優先させた行動からは純粋さが感じられました。口先だけはなく行動も伴っていたからこその好印象です。

*****

高級住宅が立ち並ぶ地域で児童相談所や保育園の開設が中止になっていることが報道されています。反対している人たちはいろいろな理由をあげていますが、突き詰めますと「高級住宅地に児童相談所や保育園は相応しくない」ということのようです。高級住宅地の価値が下がると主張しています。

共働き家庭をサポートするという意味では児童相談所や保育園は必要です。これだけ待機児童問題が報じられている中で多くの人が児童相談所や保育園の必要性を思っているはずですが、それでも自分たちに少しでも損害が及びそうになりますと反対となります。

「損害」という言葉は大げさかもしれません。自分の土地を侵害されたりといった物理的なことではないからです。敢えて言葉を変えるなら「迷惑」です。自分たちに迷惑がかかりそうなので反対しているのです。おそらく反対している人の中にも倫理的観点では、「世の中は、誰もが平等で幸せになるべきだ」という考えの人もいるはずです。それでも自分に迷惑が及びそうになるときは話が変わってきます。

沖縄の米軍基地問題も全く同じです。誰もが日米安保の重要性を認識していますが、米軍基地が自分たちの近くに来るのは了承しません。以前、本土の都道府県知事に「沖縄の米軍基地の受け入れの可否」のアンケートをとったところ、手をあげたのは大阪の橋本府知事だけだったというニュースがありました。「沖縄はかわいそうだ」と思っていても、どこの都道府県も米軍基地の受け入れは困ると考えています。

これらは詰まるところ「自分さえよければ、それでよし」という発想が頭の中にあるからです。そしてその発想の延長戦上には、優越感というやっかいなものがあります。他人よりも優れている自分のアイデンティティを失いたくないという発想です。そして、その発想の裏側には自らのアイデンティティを自慢したいという欲望も働いています。高級住宅地の価値が下がると考えるのも、裏を返せば「普通の人では住めないようなお金持ちが住む地域に住んでいる」という優越感を持っていたいからです。

以前マツコ・デラックスさんがテレビで「同窓会には出席したくない」と発言して、注目されたことがありました。マツコさんに言わせますと、同窓会は成功している人が自慢する場所ということらしいです。僕も同感です。

40代の頃、高校時代の友だちと20年ぶりくらいに会ったとき、言葉の端々に有名な人や場所の名前が出てきました。有名人と知り合いであることをさりげなく話の中に紛れ込ませるのです。この経験をしてから昔の友だちとは会わなくなりました。というよりも会いたい気持ちが失せてしまいました。

マスコミを見ますと格差社会が問題になっていますが、格差社会を作っているのも優越感です。ほかの人よりも優れたアイデンティティを自慢したいという欲望があるからです。もし、「みんなが平等に幸せになりますように」とあらゆる人が考えるなら格差社会になどならないでしょう。

今、世界を見渡しますとEUでは移民排斥を訴えている極右政党が伸張し、米国でも人種間の対立を煽るような事件や入国を目指している難民を阻止しようという動きが起きています。こうした状況はナチスドイツの優生思想を連想させてしまいます。その思想によって覆われた社会が人間にとって健全でないことはあきらかです。

優生の「優」は「すぐれた」意味もありますが、「やさしい」という意味もあることを今一度思い起こしてほしいと思っています。

じゃ、また。

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posted by satoaki at 16:11 | カテゴリ無し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月04日

<メルカリからメルケル>

僕には今、気に入っているテレビCMがあります。それは積水ハウスのCMなのですが、積水ハウスにはCMに「〇〇篇」といったような幾つかの種類があります。その中で僕が好きなのは「グリーンファースト ゼロ「午睡の夢」篇」です。リビングルームのソファで気持ちよさそうに横になって寝ている20代後半と思しき女性に、父親らしき人がゆっくりと近づいてそ〜っと上掛けをかけてあげる」30秒のCMです。

たったこれだけのCMですので、見ようによっては「リビングルームで女性が寝ているだけのつまらない映像」ということになります。なにしろ出てくる場面はリビングルームだけで、登場するのは横になって気持ちよさそうに寝ている女性とその父親らしき人がCMの最後のほうにほんの僅か出てくるだけです。しかも、この男性は顔もほとんど映りません。ただ画面左から出てきて上掛けをかけて左に戻るだけです。

この映像を見て想像できるのは、どこかに嫁いだ娘さんが久しぶりに帰省してゆったりとくつろいでいる光景です。普段の生活で緊張している気持ちが生まれ育った家に戻ったときに、つい心が落ち着いてゆったり休んでいるのです。父親らしき男性がそ〜っと上掛けをかけてあげるところに娘を思い遣る気持ちがあらわれています。

しかし、もしかしたならまだ嫁いでいないのかもしれません。毎日の仕事でプレッシャーに押し潰されそうになっている娘さんが休日に緊張から解き放されゆったりと心を落ち着かせているようにも見えます。どちらにしても、自分の生まれ育った家だけが、心を落ち着かせることができる場所ということを表しています。積水ハウスさんが、「自分たちはそのような家づくりを目指している」という意図が伝わってくるCMです。

これほどシンプルであるにもかかわらず、企業の思い、姿勢が伝わってくるCMを作った制作の方々の素晴らしさに感動しています。基本的にCMは広告代理店が作りますが、採用の可否を決めるのは企業です。ですから制作の方々と同じくらい、企業の担当者ならびに経営陣にも感動しています。

どんなに素晴らしいCMを作ろうとも採用されなければ日の目を見ることはできません。CMの価値を決めているのは企業です。さらに突っ込んで言うなら経営者です。仮に、経営者がCMに関して全く関与していないとしても、それはそれで凄いことです。なぜなら、自分の感性よりも担当者のセンスを信頼しているからです。そうした考えを持っていること自体が素晴らしい感性の持ち主であることを示しています。

経営者が担当者にすべてを任せるというのは簡単なようでいて、実は容易ではありません。なぜなら、経営者は最終責任を負うのが使命ですのでどうしても一言二言言いたくなるからです。実力者経営者とかワンマン経営者と言われる人ほど自分の意見を通そうとする人が多いようです。しかし、「自分の意見を通そうとする」ことと責任を負うことは別物と考えている経営者もいます。

東日本大震災のときの原発事故に関する裁判について報じられていました。当時の実力者であった東京電力の会長が「現場に責任がある」と発言したそうです。「経営者は結果がすべてである」と喝破したのは経営評論家の三鬼陽之助氏ですが、その言に照らしますとこの会長は経営者として失格です。

先日も東京電力はツイッターに「#工場萌え」と投稿して物議を醸しましたが、その鈍感さに落胆させられました。まだ避難者が5万人以上おり、復興半ばである今の時期にこのような投稿をする感性が現在の東京電力の姿勢を表しているようにも思え、残念です。

以前は広告と言いますと、テレビCMや新聞またはラジオ、雑誌などでしたが、今はSNSも立派な広告になっています。その意味で言いますと、企業が安易にツイッターを利用するのは危険です。

わざわざ言うまでもありませんが、広告が企業の命運を決めると言っても過言ではありません。ですから、企業は広告代理店に高額なお金を払ってでも優れた広告を制作してもらおうとします。しかし繰り返しになりますが、最終的に決めるのは企業であり、経営者です。

今、日経ビジネスでは堤清二氏の特集を組んでいます。堤氏の本が出版されますので宣伝の意味もあるのでしょうが、読み応えのある記事です。ネットで無料で読むこともできますので経営や広告に興味のある方はお読みになってはどうでしょうか。実は、僕は積水ハウスの広告の素晴らしさを感じるたびに堤清二氏を思い出しています。また、今回の東京電力会長の責任回避の発言を聞いたときも、僕が真っ先に頭に浮かんだのは堤清二氏でした。

今から10年以上前にこのコラムで書いた記憶があるような気がしますが、「堤氏ほど潔い経営者はいない」と僕は思っています。堤氏は西武百貨店を成功させ、パルコを作り無印良品を作り、文化的発信も行っていた経営者です。ちなみに、ご存知の方も多いでしょうが、作家・辻井喬としても活躍していました。

その堤氏は第一線を退いたあとにもかかわらず、創業者の責任という意味だけで関連グループの負債に対して個人資産を投じてまで弁償しています。第一線で活躍しマスコミからちやほやされているときは雄弁に語っていた経営者が業績の悪化とともに責任逃れをする例をたくさん見たことがありましたので、その正反対の行動をとった堤氏に尊敬の念を抱いた次第です。

堤氏は広告の先駆者でもあったように僕は思っています。コピーライターを世の中に認知させたのも堤氏のように思います。コピーライターと言って真っ先に思い浮かぶのは糸井重里さんや仲畑貴志さんでしょうが、この方々を引き上げたのは堤氏です。言うなれば、コピーライターという職業が世に出る土壌を作ったと言えそうです。大げさに言うなら、堤氏は広告に文化を吹き込んだ人とも言えるように思います。

これだけ影響力のある広告ですので、是非とも社会をよい方向に向かうような仕事をしてほしいと思います。ポピュリズムが蔓延る社会は危険です。実は、堤氏は東大時代に共産主義に傾倒した時期がありました。その時期に一緒に行動していたのが読売新聞の渡邉恒雄氏や日本テレビの氏家齊一郎氏です。のちに転向しましたが、心の中では資本主義に対する疑念があったように思います。

広告は使い方によってはポピュリズムを作り出すことができます。トランプさんがあれだけ批判されながらも一定の支持率を得ているのは広告の力だと言っても過言ではありません。今、世界は自国第一主義になりつつあります。世界全体が「自国ファースト」に突き進んでいます。そのような世界にならないような広告が作り出されることを願っています。そのためには広告を作る人たちが「他人を思いやる気持ち」になることが一番目です。

ドイツのメルケリ首相が引退するという報道を見て、世界中が他人を思いやる気持ちがなくなていることに少し不安になっている今日この頃です。

実は、本当は今週のコラムは先週はじめましたメルカリについて書くつもりだったのですが、なぜかドイツのメルケリ首相が党首辞任のニュースに気持ちが動き、それが堤氏に移り、このようなコラムになりました。メルカリで9千円の売上げがあったのですが、そのお話はまたいつか。

じゃ、また。

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posted by satoaki at 15:51 | カテゴリ無し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする