2018年08月05日

<職場のしわ寄せ>

東京医科大学が女子の受験生に対して一律10%の減点をしていた、という報道がありました。まだ真偽は定かではないようですが、そのほかの報道から鑑みますと満更ウソでもなさそうです。この不公平に対して各方面から怒りの声が出ていますが、普通の感覚からしますと至極当然の反応です。

かつて受験戦争という言葉が出始めた頃、マスコミ世論は「勉強だけで人間を計る受験制度は間違っている」という意見を正論のようにもてはやしていました。そのとき当時の中曽根首相が「受験戦争ほど公平で平等なものはない」と正反対の意見を述べていたのが印象に残っています。

中曽根首相の真意は「社会に出ると人間関係やいろいろなしがらみなどにより、実力以外の要素で人物評価が決まることがある。それに対し受験は自分が勉強するだけで評価されるのだからこれほど公平で平等なことはない!」というものでした。確かに、大人になり会社や組織で働いていますと、上司との性格の相性とか派閥だとか学閥などといった実力以外の要素で評価が決まる場面があります。もしかしたらその要因のほうが大きいかもしれません。それに比べますと、受験は自分が努力した結果だけで評価されるのです。それを聞いた当時、僕はやけに感心した覚えがあります。

社会が適切な評価がなされないで動いていくならその社会は必ず崩壊するでしょう。努力をした人間が評価されるのが理想の社会です。今、問題になっている日本ボクシング連盟などはその際たる例かもしれません。勝負の判定が実力ではなく社会的地位の高い人が恣意的に決めるのであれば、いったい誰が苦しく辛い練習をするでしょう。人が努力をするのは公正な審判が行われることが大前提になっています。わざわざ言うまでもありませんが、八百長は社会公正に反しています。

東京医科大学の女子受験生の一律10%減点が事実であったなら受験そのものが八百長ということになります。そのような受験のやり方がまかり通っていいわけがありません。

ですが、この報道で僕が気になったのが八百長をすることになった理由です。「女性は医師になったあとに、出産や育児で医者としての仕事から離れる確率が高いから」という理由です。これに対して「女性が働きやすい環境を作ることが必要」で「そういう努力をしているのか?」という反論が出ています。

もちろんこの反論は正論です。

いろいろなところで報じられていますが、現在の医療現場は働く医療関係者の立場からしますとブラック企業と変わらないそうです。医師もそうですし、看護師も同様です。では、なぜブラック企業化するかと言いますと人手が足りないからです。

僕はラーメン店を営んでいましたが、売上げが好調のときも含めて一番困ったのはパートさんアルバイトさんの確保でした。客席が10人くらいの規模のお店でしたら夫婦二人でお客様を捌くことはできますが、僕のお店は倍以上の客席がありました。ですから、最低でもあと一人の従業員が必要でした。ですから、突然休まれてしまいますとピークタイムはひっちゃかめっちゃかの状態で対応しきれませんでした。こうした状態が数日続いたならお店の評判はガタ落ちになり閉店に追い込まれても仕方なかったでしょう。それほど人員確保は大切です。

小さなラーメン店でさえ人員確保は重要な問題なのですから、人の命を扱う医療現場では尚更です。それこそ死活問題です。このような背景がある中で医師を育てる大学が入学の時点で性別で差をつけるのも理解できないでもありません。

僕が「理解できないでもありません」と思うのは、医師を養成する大学は「入学者がそのまま将来の働き手になる」という記事を以前読んでいたからです。女性は出産や育児で職場を離れる確率が高いのですから、そのリスクをできるだけ低くしようと考えるのは経営の面で考えますと当然です。

あるコラムニストの記事を読んでいましたら、最近の若い人が「経営者目線でものごとを見る、考えることの裏に隠れていること」を指摘していました。そこには「意識高い系の人によく見られる傲慢さ」が感じられるからです。確かに「傲慢さ」は人間性という観点ではいただけませんが、「経営者目線で仕事に取り組む」のは正しい向き合い方だと僕は思っています。

もし、ラーメン店で働いているパートさんやアルバイトさんがお店側の状況などお構いなしに自分の都合だけを優先させて働いていてはお店はやっていけません。病院も同様です。現在、どのような職場でも起きていると想像しますが、育児や子育て中の女性と独身またはお子さんがいない女性との関係に軋轢が生じているようです。いくら理想論を言おうが、現実問題として子育てをしていない女性たちに“しわ”寄せがいくのは事実です。そしてそれが職場に溝を作っています。

会社が倒産しないためには、結局だれかが“しわ”を受け入れる必要があります。それが許容範囲であればなんとか我慢できますが、限度を越えますとその組織は崩壊します。

現在、コンビニは生活に欠かせないインフラと言われるほどの存在になっていますが、コンビニが成り立っている一番の理由はフランチャイズ方式だからです。もし直営方式であったならとうの昔になくなっていたでしょう。なぜなら人員確保がままならないからです。フランチャイズ方式ですと、“しわ”は加盟店主が引き受けることになっていますので心配はいりません。

コンビニの“しわ”の最大の要因は24時間営業ですが、かつてローソンで社長に就任した新浪氏が24時間を見直そうとしたことがあります。しかし、実現できませんでした。そして今年ファミリーマートの新しい社長に就任した澤田氏も同じような発言をしました。しかし、その後進展はしていないようです。これがなにを意味するかと言いますと、誰かが“しわ”寄せを受ける状況を改善する方法が簡単に見つからないことです。

今回の医科大学における女子受験生に対する一律10%減点という八百長が起こる核心には女性が働きにくい職場になっている医師の世界があります。これを改善するのは先のコンビニと同様に簡単ではありません。コンビニの従業員は資格がなくてもできますが、医師は難関の資格を持っている必要があります。職場の改善の難しさはコンビニの比ではありません。

しかし、医師の世界のブラック化を解消し、女性医師が活躍できるようにする必要があります。そのためには旧態依然とした発想しかできない昔ながらの経営者ではなく斬新な発想を持った若い経営者が病院または医科大学の経営に携わる必要があります。

吉田拓郎さんは歌っています。

「古い船には新しい水夫が乗り込んで行くだろう」

じゃ、また。

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posted by satoaki at 14:59 | カテゴリ無し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする